岡本綺堂の怪談

影を踏まれた女 岡本綺堂怪談集(光文社文庫) 
岡本綺堂 怪談選集(小学館文庫)
お盆というわけではないが、半七をちょっとお休みして、岡本綺堂の怪談を読む。
光文社のほうは短編集「青蛙堂鬼談」+3作品、小学館のほうは「青蛙堂鬼談」からの抜粋+6作品、ということで、この二つの文庫の間では実は半分以上作品がかぶっている。が、多数あるはずの岡本綺堂の作品だが、現在出版されているものは半七以外はかなり少ないので、とにかく出版されているものは押えておかないといけない。
解説にあるとおり、欧米の「モダンホラー」の日本版ということで、いわゆる日本伝統の「怪談」とは趣が違い、どちらかといえば淡々とした語り口の中に恐ろしさが潜む。
以前どこかで読んだのだが、例えばお岩さんなどは、お岩さんの姿は恐ろしいけれど、ストーリー自体は因果関係がはっきりしているので、その時点で恐ろしさは終わっている。本当に恐ろしいのは何の因果関係も無い話で、それこそ物語だけでぞっとするものだ。綺堂の怪談はその手の話が多いので、逆に時代が経っても通用するような気がする。