半七捕物帳 第1巻(春陽文庫版)

岡本綺堂
長らく「半七捕物帳」というのは、ミステリーではなく、時代劇のドラマだと思っていた。
原作があると知ってからも、ミステリーではないと思っていた(笑)
創元の日本探偵小説全集にもなかったし・・・・(久生十蘭編には「顎十郎捕物帳」があって「捕物帖」ってミステリーなのか・・・と思ったぐらいだ、そういえば読んでない)
しかし、近年高橋克彦さんの「だましゑ歌麿」シリーズ等を読むようになると、「半七捕物帳」は日本独特の傑作ミステリーなのだ、という情報が、やっと私の中に入り始めてきた。
で、そろそろ読みたいなと思って古本屋にいったら、全巻そろっているたのは春陽文庫版だけだったので、これを購入。現在最新版は光文社から全6巻で出版されているが、春陽文庫版は全7巻構成、なので、わさわざタイトルで(春陽文庫版)とことわった次第。
さて、日本の本格推理の始まりは(諸説あろうかと思うが)江戸川乱歩の「二銭銅貨」(1923)であるとするなら、半七捕物帳(1919)はそれ以前の作品ということになる。
確かに本格推理としてはものたりないが、例えばホームズが本格推理としてはものたりなくても、その価値にはなんら揺るぎがないがごとく、半七捕物帳も、ストーリーテリングの妙味から、その価値はけっして下がるものではない。明治時代の若者が、いまだに生存している半七老人から江戸時代の話を聞くという設定は、江戸時代が生々しく感じられる卓越した手法だと思う。
これにはまったら「人形佐七捕物帳」や「銭形平次 捕物控」も読み始めたりして。
日本探偵小説全集の坂口安吾の安吾捕物帖、久生十蘭の顎十郎捕物帳、平賀源内捕物帳も読んでみようかなあ。