ホドロフスキーのDUNE(2013)

フランク・ハーバートの「デューン 砂の惑星」の映像化は、かのデイヴィッド・リンチの映画(1984)と、その再編集によるテレビ版(1994)と、テレビ・シリーズ2作(200)(2003)が正式なものだが、実はそれ以前から映画化の企画はあった。
そこらへん「砂漠の神皇帝」の解説にいきさつが書かれてあり、カルト的大家のホドロフスキー(解説ではジョドロフスキーとなっているが、綴りが"Jodorowsky"だからか)が、大量の絵コンテをまとめ、オーソン・ウェルズ等、大物を含む配役まで決まりながら結局実現しなかったことは、その時点で把握はしていた。
ところが、マイミクの方からの情報で、そのいきさつそのものがドキュメンタリー映画になっていることを知った。(日本でのDVD発売は2015年)
慌てて調べて、レンタル落ちが廉価であったので買ってしまった。
その内容は最初から最後まで驚きの連続で、いちいち挙げていたらきりが無く、映画を見ていただいた方が早いのだが、いくつか書く。
まず驚くのがホドロフスキーデューンの映画化に対する情熱、使命感の強さである。
彼はスタップを「魂の戦士」として探していた。「2001年宇宙の旅」で知られる特撮技術者に会った時、技術だけが高い俗人と知ってスタッフに誘わなかったというエピソードがあった。
また、皇帝役にキャスティングされていたサルバドール・ダリが、プログレファンにはELPの「恐怖の頭脳改革」のジャケットでお馴染みのR.H.ギーガーをホドロフスキーに紹介した、と言う話も興味深い。あの(典型的な自己中心主義に見える)ダリが、客観的に後輩にあたるアーティストの才能を評価していた、と言う点が意外でもあり、さもありなん、とも思う。
そして、ホドロフスキーが魂の戦士としてスタッフに加えたダン・オバノンが、後にR.H.ギーガーを誘って完済させたのが、かの「エイリアン」である!
そして、映画化が頓挫したのち、デヴィッド・リンチが監督で映画化されると知り「彼なら成功させるだろう」と打ちひしがれ、上映されても見に行かなかったが、息子(ポウル役にキャスティングされていた)に「見なきゃだめだ」とさとされ、重い腰をあげて見に行ったところ、見てゆくうちに「これは失敗だ!駄作だ!」とだんだん元気になっていった、という話にはワロタ。勿論、リンチのせいではなく「製作者のせいだ!」と言っていたが。
最後に、なぜ未完に終わったこの映画が、のちのSF映画界に多大な影響を及ぼした、と言われている事について、やっと納得がいった。
映画会社を納得させるために、膨大な絵コンテやデザイン画等の資料をまとめた大判の分厚い本を作成し、それを映画会社に配っていたのだ。
映画化には難色を示しながらも、映画会社はその資料から、さまざまなアイデアをパクって(いや、インスパイヤされて)その後の多くのSF映画のヒット作が生まれた、という事なのだ。
寡聞にしてホドロフスキーの事を知らなかったのだが、デューン、SF、映画とかにかかわらず、万人に見てほしい映画である。
いや~なんか芸術に対する情熱がまた蘇ってくるなあ。(死んでたわけではないが(笑))