エクスカリバー(Excalibur)(1981)

なんとDVDが690円で売られていたので、思わず買ってしまう。大分前、アーサー王伝説も良く知らない頃にケーブルTVの洋画専用チャンネルで見て、その後アーサー王伝説を調べて、この映画のエピソードを探したのだがちっともでてこなかったことが多かったのを覚えている。そのぐらい大胆な脚色が施されているので、レヴューで「アーサー王伝説の入門に最適」等と書かれているが、それはあきらかに間違い。あくまで、映画用に作られたストーリーということを意識して見た方がいい。ただし、よくまとめられているので、面白い事は確か。
作品を貫くのは聖剣「エクスカリバー」なのは勿論だが、アーサーの姉(彼女にとって、アーサーは自分の父の仇の息子になる)の復讐であり、それを軸に各エピソードが絡められる。さらに言えば、その復讐劇の遠因を作ったともいえるマーリンによる「辻褄あわせ」がそれを覆っている。
有名な「岩から引き抜く剣」と「エクスカリバー」は別物のはずだが、同じ物になっている。また、そもそもグィネビアとランスロットの不倫も、アーサー王伝説では(肉体的には)成就はしないのだが、映画では成就してしまい、それを知ったアーサーが「エクスカリバー」を捨て、それが大地の荒廃を招き、大地を救うために聖杯探求がなされるという展開は、よくぞまあ考えたものだという感じ。でもアーサー王伝説ではこんな事は無い。(王が大地そのものというのは、本来母系的文化のケルト的では無いし)
そもそも、グィネビアとランスロットの不倫も、後のフランス宮廷あたりからのロマンティック話のリクエストによって、後発で付け加えられた話で、その大元は同じアーサー王伝説の「トリスタンとイゾルデ」なのだが、ランスロットが花嫁としてのグィネビアを王の名代として迎えに行き、そこで二人とも一目で恋に落ちるという、この映画だけの展開は、あきらかに「トリスタンとイゾルデ」から来ており、開き直ったのかさらに大元に近づけてしまった。で、まさかと思いきやバックにワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」がかかるのだ。ひらきなおりか?パーシヴァル登場シーンには「パルシファル」がかかるし、他にもワーグナーがやたら流れる。イギリスが舞台なのにワーグナーと言うのはかなり違和感である。(ケルトとゲルマンの違いもあるし)
(裸で眠るランスロットとグィネビアの間にアーサー王エクスカリバーを突き立てるシーンも「トリスタンとイズー伝説からとられた事を知った 2010/12/08 付記)
と、いろいろ書いたが見て損は無い。なにせ690円である。
ちなみに「エクスカリバー 聖剣伝説」(1998)というのもあるらしい。こっちはマーリン中心のようだ。ルトガー・ハウアーが出ているではないか!ちょっと気になる。
さらにちなみに「アヴァロンの霧」マリオン・ジマー・ブラッドリーという小説があるらしい、上記の「アーサーの姉」の視点から、ドルイドとキリスト教の対立をもりこんであるとか、これも気になるが入手は難しそうだ。
追加情報、この作品、2001年にドラマ化されているようだが日本発売は無いようだ。レヴュー書いた人はどこで見たのだろう。