パイジェッロ「セヴィリアの理髪師」

Wilhelm Keitel指揮 Putbus Festival Orchestra(1997)
「セヴィリアの理髪師」と言ってもロッシーニでは無い。ロッシーニが「セヴィリアの理髪師」を発表するまでは、「セヴィリアの理髪師」といえばパイジェッロであった。
モーツァルトの同時代オペラを聴いておきたい、と言う中で、この人は外せない(ハイドンの8歳下、モーツァルトの16歳上)のだが、これまた録音が少なく、あったとしても高値がついている。やっとの事で廉価の輸入を探した。
ネット上では「ロッシーニと比べて〜」という論調が多いようだが、音楽様式が別の時代なのだから、それは不公平な気がする。
実際、ボーマルシェ(仏)の芝居3部作のオペラ化が「セヴィリア〜」(第1部)と「フィガロ〜」(第2部)であり、モーツァルトの「フィガロ〜」はパイジェッロの「セヴィリア〜」の4年後に書かれているし、モーツァルトもパイジェッロの「セヴィリア〜」を意識して「フィガロ〜」の音楽性を構築したようだ。
さて、ロッシーニに比べて約1時間45分でコンパクトだし、個人的にはこちらが好ましいのだが「フィガロ〜」の「もう飛ぶまいぞこの喋々」とか「セヴィリア〜」の「私は町の何でも屋」とか、一発で覚えられるような特徴的な音楽が無いのが痛い。しかし比べる相手がモーツァルトロッシーニでは、かわいそうと言えばかわいそうだ。
その点を抜きにすれば、掛け合い等も凝っているし、大変楽しい音楽である。