ワーグナー「さまよえるオランダ人」
サヴァリッシュ指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1961)
オランダ人:フランツ・クラス
ゼンタ:アニヤ・シリヤ
ダーラント:ヨーゼフ・グラインドル
エリック:フリッツ・ウール
マリー:レス・フィッシャー
舵取り:ゲオルク・パスクダ
バイロイト・BOXである。
以前、この「さまよえるオランダ人」は、オリジナル版と、結末が救済になる改訂版がある事を書いたと思うが(知らなかったが)実は、初演の際、舞台技術の関係で本来の1幕の版が演奏できずに、3幕版として初演されたという。さらに「ゼンタのバラード」が本来はイ短調だったが、初演の歌手の力量のせいで、キーが下げられト短調となったという。
1音違えば、ずいぶん印象が違うだろうが、まだまだオペラ作曲家としては小物だったワーグナーだからこんなことになったのだろう。
そして、このサヴァリッシュ盤は救済無しの3幕版の初演版ではあるが「ゼンタのバラード」だけは本来のイ短調だという。
ちなみにクナッパーツブッシュ盤を確認したらト短調だった。しかし、ヴァルナイは本来の声質はメゾだからあまり違和感はない。
さて、サヴァリッシュや他の歌手も素晴らしいのだが、この録音の価値はゼンタのアニヤ・シリヤに尽きる。「ローエングリン」の時に書いた「危うさを伴った、むき出しの少女のような可憐さ」が、このゼンタという役にぴったりだからだ。