ワーグナー「ローエングリン」
サヴァリッシュ指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1962)
ローエングリン:ジェス・トーマス
エルザ:アニヤ・シリヤ
オルトルート:アストリッド・ヴァルナイ
テルラムント:ラモン・ヴィナイ
国王ハインリヒ:フランツ・クラス
軍令使:トム・クラウゼ
他
バイロイト・BOXである。ヴァルナイがオルトルートという事で聴く。
サヴァリッシュという人は、堅実とかオーソドックスとかよく言われるのだが、オーソドックスでつまらない、という言い方は決してされない、常に良質な演奏をする指揮者である。つまりは、何を聴いてもけっしてはずれが無い指揮者なので、何でも安心して聴ける。
アニヤ(アニャ)・シリヤという歌手は、知らなかったのだが、10歳でデビューの元天才少女で、この時22歳、このBOXには、同年の「タンホイザー」前年の「さまよえるオランダ人」(ともにサヴァリッシュ指揮)が収録されているが、当時の若きバイロイトのヒロインだったようだ。
この人の特色は、ワグナー・ソプラノを歌うための強靭な声を持ちながら、可憐さも併せ持っている、という点にある。リリックの可憐さではない。「危うさを伴った、むき出しの少女」のような可憐さである。これはたぶん唯一無比の声質と言える。しかしその分音程や発声の不安定さが若干気にならなくもない。しかし、役柄としてはあっているのだろう。
テルラムントはバリトン転向後のヴィナイであるが、テノール時代のヴィナイには発声が不安定だと文句ばかりつけていたが、バリトン転向後もやはり発声が不安定で、どうにかならんのかな、この人は。
さて、お目当てのオルトルートのヴァルナイであるが、以前、やはりヴァルナイがオルトルートを歌っている「カイルベルトの「ローエングリン」で
「やはりヴァルナイが歌うだけで世界が変わってしまうという」
と書いたが
http://hakuasin.hatenablog.com/entries/2010/12/17
こちらも同様、若きシリヤも頑張っているが、やはり格の違いを感じる。
ちなみに、このバイロイト・BOXであるが、ベームの「指環」のみを目当てに勝ったのだが、それぞれの演奏をいろいろ調べたら、かなり良質な演奏が集められていることがわかった。これは値段からしてもワーグナー入門に最適ではないか?って、全部聴く前に言うなって。