ヴァンスカの シベリウス クレルヴォ交響曲 新盤 その他

シベリウス クレルヴォ交響曲
ヴァンスカ指揮 ミネソタ管弦楽団(2016)
ヘルシンキ大学男声合唱
リッリ・パーシキヴィ(Ms)
トンミ・ハカラ(Br)

ヴァンスカのクレルヴォ交響曲の新盤は、シベリウス交響曲全集の新盤と同様ライブ録音である。
ヴァンスカのシベリウス交響曲全集の新盤について、抒情性とストイックさが同居している、と書き、後にはドラマティックさが増した分透明感が失われた、と書いた。
そして、その全集の後のこのクレルヴォでは、そのすべてが昇華し、ヴァンスカの「大いなる自然体」が完成したと言える。ドラマティックではあるが、どこにも無理が無い。
旧盤同様第2楽章の遅いテンポは好みが分かれると思うが、それを差し引いても大変な名演である。師のヨルマ・パヌラの境地を超えたかもしれない。


オッリ・コルテカンガス「移住者たち」
ヴァンスカ指揮 ミネソタ管弦楽団(2016)
ヘルシンキ大学男声合唱
リッリ・パーシキヴィ(Ms)
ヴァンスカのクレルヴォ交響曲の新盤が、お高いな、と思っていたら、CD2枚組で、2枚目にはこの曲と「フィンランディア」の合唱版が収録されている。
この曲はヴァンスカとミネソタ管弦楽団がコルテカンガス(1955年生まれ)委嘱して作曲された2014年の作品との事。フィンランドからミネソタ州に移住した詩人シーラ・パッカの詩に基づくメゾ・ソプラノと合唱付きの管弦楽曲である。
ミネソタ州は北欧系の移民が多かったそうだ。ヴァンスカがなんでアメリカのオケの音楽監督なんだろう、と思っていたが、そういう経緯があったのだ。
曲は現代音楽であるが、大変聴きやすく仕上がっている。

シベリウス 「フィンランディア」合唱版
ヴァンスカ指揮 ミネソタ管弦楽団(2016)
ヘルシンキ大学男声合唱

フィンランディア」に合唱版があることは知っていて、いつか聴いてみたいと思っていたので、今回聴けて良かった。
上記クレルヴォ同様、大変ドラマティックな演奏なのだが、通俗的なこの曲をドラマティックに演奏すると、通常はその通俗性が増すのだが、不思議なことにまったく通俗性を感じない驚異の演奏である。これがヴァンスカのたどり着いた境地なのだ。演奏後の観衆の熱狂の凄さもやんぬるかな。
いつ合唱がでてくるか、と思ったらいつまでも合唱が出てこない、全体の3分の2あたり、構成上でいうと2つの序奏のあとのA(アレグロ)B、AのB以降が合唱付きであった。
なんか、これを聴いてしまうと、これからはすべてのフィンランディアはこの合唱版でいいんじゃないか、と思えるくらい魅力的である。