「春いくたび」

山本周五郎
先日ちらっと書いた山本周五郎少年少女向け作品集の一冊目。
少年少女向けということで、幾分シンプル、明朗、勧善懲悪、活劇路線が強く、また戦前戦中の時節柄、修身色、勤皇色が強い作品もある。
しかし、深さでは大人向けの作品にけっして引けをとらない。(表題作「春いくたび」の尋常ならざる切なさは、少女向け小説の範疇では無い)
シンプルな分、山本周五郎の「人間とはかくあるべき」という、日本人の心の底にひそんでいる倫理観のインパクトは強いかもしれない。