シベリウス 「春の歌」原典版

シベリウス 「春の歌」(1895 年版)
ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団(2002)

「春の歌」については今まで書いていなかったが、シベリウスには珍しく明るさに満ちた曲で、聴いてゆくとけっこうはまるのであるが、はまってくると明るいだけの曲でないことが分かってくる(その点は後述)(ちなみに今まで手元にあったのはベルグルンド:ボーンマス交響楽団盤とネーメ・ヤルヴィ:エーテボリ交響楽団盤)
この曲にも原典版があり、ネット上ではこちらのほうがいいという声もあり聴いてみたかったので探したら、「大洋の女神」(海の精たち)各種が収録されたCDに収録されている、という事で、もともとはこちら目当ての購入であった。
さて、この曲は元々「春の悲しみ」という副題をもつ管弦楽曲であった。それが何回かの改定を経て今の形になる。なので、最初聴いた時は明るさが目立つが、聴きこんでゆくと隅々に陰影が施されていることがわかってくる。
さて現行版と原典版を聴き比べると、現行版は原典版をカットしている部分がある事がわかる。例えば木管による長めの序奏、中間部の金管によるファンファーレ的な部分等々。
序奏部のカットは惜しいが、現行版はファンファーレのカットのおかげで音楽の流れは良くなっているし、クライマックス部は原典版が少々粗削りなため現行版のほうが哀しみ(というか切なさ)の効果は高い。
これはどちらかを残してどちらかを捨てるのではなく、両方の版とも残して補完しあって聴くべきだと思う。