ソフト・マシーンは、プログレッシヴ・ロック、ジャズ・ロックにおいてエポック・メイキング的な重要なバンドである事は周知の事実であるが、このバンド、オフィシャル・アルバムにおいて同一メンバーによる録音が1枚も無い。
ということは、それぞれのアルバムにおいて音色や演奏に特徴があるわけなのだが、個人的にこの「ソフト・マシーン6」(発売当初はアナログ2枚組)の前半のライブ録音部分がけっこう気にいっている。
このアルバムは、後に「アディエマス」を発表するカール・ジェンキンスが、それまでの個性の強いアルト・サックス奏者、エルトン・ディーンに替わって参加した初めてのアルバムである。彼の担当は、オーボエ、バリトン・サックス、ソプラノ・サックス、そしてキーボードなのだが、アルト・サックスに替わるオーボエの冴え冴えとした音色が実にアンビエントな味わいを醸し出している。
大々的なブラスセクションを導入した「ソフト・マシーン3」や、初めてのギタリストの導入である「収束」における変化の影に隠れがちだが、これはかなり大きい変化だといえる。
さらに、カール・ジェンキンスはこの後どんどんキーボード選任になっていき管楽器を吹かなくなり、バンドの主導権を握っていく。
そして、このアルバムを最後にベースのヒュー・ホッパーが脱退し、ロイ・バビントンが加入する、バビントンはいい意味で軽やかなベーシストで、ソフト・マシーンのフュージョン化に大きく貢献しているが「ジャズ・ロック」の「ロック」としての重たさも保持していたヒュー・ホッパーのベースが、この時期のジェンキンスの浮遊感と絶妙なコントラストを描いている。
なのでこの時期の演奏は実に個人的には貴重だ。ソフト・マシーンは発掘音源的なCDが数多く出ているが、この時期の演奏は私の知る限りBBCの音源を集めたシリーズの"BBC Radio 1971-1974"に収録されている1曲のみである。
それだけ、このメンバーの活動期間が短かったのだろうが、残っているなら発売してもらいたいものだ。