1959年生まれの私にとってはラドンというのは東宝三大怪獣の一角であり、その後も各種怪獣映画に登場するも、どうもゴジラやモスラに比べて影が薄いような気がしていた。
なので、のちにさまざまな怪獣映画を見たり購入したりした際も、東宝初のカラーの怪獣映画である「空の大怪獣ラドン」には食指が動かなかった。
しかし、歳を重ねるとだんだん「そもそもラドンってどういう怪獣だったんだろう」と思い始めたら、運よくレンタル落ちの廉価があったので購入してみた。
結論から言うと、これは昭和の怪獣映画の1位2位を争う傑作である。なんで今まで見なかったのか。
原作が黒沼健という事もあろうが(黒沼健を知らない人は調べてね)非常に重厚で濃密でしっかりしたドラマである。
個人的に昔の怪獣映画はラストしか怪獣が出てこない、という先入観もあったのだが、早々と(ラドン自身ではなく)捕食怪獣であるメガヌロンを登場させ、メガヌロン対人間、ラドン対航空自衛隊、ラドン対陸上自衛隊、と人間対怪獣の視点を変えたシーンを惜しげもなく提出する手腕も見事ながら、例えばラドンの卵の殻の破片の角度から卵の大きさ、果てはラドン自身の大きさを推定する科学的考察、ラストの怪獣の悲哀さも作品の深さを物語る。
俳優陣であるが、後の怪獣映画の常連となる佐原健二、平田昭彦、また、後の大女優白川由美の若き姿も嬉しいが、個人的には特撮のみならず(「ゴジラ対モスラ」では佐原健二と仲良く?悪役を演じていた(殺し合うけどね))現代劇、時代劇のドラマ、映画に出まくる名脇役、田島義文の存在が嬉しかった。
さらに、石炭が「黒いダイヤ」と呼ばれていた時代背景も興味深い。というか半分は懐かしい(歳だね)
ちなみに、私が知っている3大怪獣以降のラドンとこの映画のラドンは造形が違う。3大怪獣以降のラドンは鳥っぽいが、こちらのラドンは爬虫類系で、元ネタのプテラノドンに近い。公式な資料は無いが、最後の2体のラドンは「つがい」らしい。ならば3大怪獣以降のラドンがその子供であるなら、一応の説明はつく。
さらにちなみに、黒沼健が原作の怪獣映画って、さぞかしいっぱいあったんだろうな、と思ったら、ラドンと「大怪獣バラン」のみであった。そうなると「大怪獣バラン」も見たくなるではないかっ!