北森鴻
「蓮丈那智フィールドファイル」「旗師・冬狐堂」を読み終わり、さて次はどの北森鴻を読もうか考えた。
上記を読んでいる間に、古本屋を含めて、ほとんどの北森鴻は入手した。
公認サイトの人気投票で作品、キャラともに1位、かつ「冬狐堂」にも顔を出す、骨董屋(古道具屋)「雅蘭堂」越名集治の「孔雀狂想曲」
やはり「蓮丈那智」「冬狐堂」で登場人物が行きつけのビアバー「香菜里屋」のマスター工藤の(日本推理作家協会賞受賞作)「香菜里屋シリーズ」
京都を舞台としたユーモア・ミステリー「裏京都シリーズ」
はたまた鮎川哲也賞受賞の長編デビュー作で、幕末から明治期の歌舞伎の名優澤村田之助の登場する「狂乱廿四孝」(どんだけ私の好みとかぶるのよ)
それともミトン様お勧めの「メイン・ディッシュ」
その他にもシリーズ的なものを含めてびっくりするほど幅広い作品群がある中、選んだのが当書。
短編デビュー作からの初期短編と、その合間に当時の裏話的エッセーという、SFファンなら真っ先にアシモフの短編集を思い出す(これも意識したか?)構成で、ほとんど予備知識無しに「蓮丈那智」「冬狐堂」を読んだ私としては、かなりありがたい本である。
先に後書きをチラッと見てみたら、あるインタビューで「尊敬する作家は」と聞かれ即座に「池波正太郎と隆慶一郎」と答えてインタビュアーを困らせてしまった逸話がのっていた。
ミステリー作家なのにミステリー作家を挙げないのも凄いが、挙げられた作家が「隆慶一郎」とは!!
出会うのは遅かったが、まさに私のために書いてくれているようではないか!北森鴻はっ!!(冗談です)
さて、作家として軌道に乗るまでの奮闘期の作品群ということもあろうが、のちのジャンルの広さを髣髴とさせるように、バラエティに富んでいる。
二重のどんでん返しが心地よい美術ミステリー、そもそも落語として発想された古墳を舞台とするミステリー、密室トリックの捕物帳、「小学三年生」に掲載されたジュブナイル、「裏京都シリーズ」の原型、「女性自身」に掲載されたOLミステリー。そして久生十蘭の「顎十郎捕物帳」のパスティーシュと、それこそ「多面体作家」といわれた久生十蘭並みの幅の広さである。
作家になる前に「編集プロダクション」であらゆるジャンルの文章を書きまくったという経験が生きているのだろうか。
旺文社の学習雑誌でミステリー漫画の原作をやっていたというのも凄い話だ(ペンネームが成瀬ゆう、漫画担当は西山優理子だとか 北森鴻として有名になったんだから、出版されればいいのに)