先日の「戦後少女マンガ史」を読んで思い出した漫画家がもう一人いる。倉多江美である。大変ユニークな作家であるという記憶はあるが、作品、内容など全く記憶が無い。現在入手しづらいようで古本屋に行っても1冊も無かった。
その際、替わりといっては何だが、以前「ファンだとは思うが1冊も持っていない」と書いた(こちら)坂田靖子をまとめ買いしてしまった。
私がこの人を好きな点は何かというと(他にもSF的、ミステリー的等いっぱいあるが)フレドリック・ブラウンを漫画化していることからもわかるとおり、欧米的な、いい意味での小洒落たセンスがあげられる。
また、「バジル氏の優雅な生活」を始め、彼女が好んで作品化する19世紀後半から20世紀初頭にかけての、いわゆるビクトリア朝末期とその残滓が残る時代の魅力がある。
基本的に無産階級である貴族という存在は、民主主義的にはあってはならないものだし、仕事に費やす時間を必要としないために生まれる膨大な余暇を、すべての貴族が有効活用していたとは思えないが、それでも、そういう階級の余暇の時間(と資産)のおかげで、学術や芸術、文化が維持されてきた面も否定できない。
そういうしちめんどくさいことは抜きにしても、セイヤーズのピーター卿等、貴族キャラは抗し難い魅力があることは確かだ。