ヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」

ガヴァッツェーニ指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1961)
ティト・ゴッビ
ジョルジョ・トッツィ
レイヤ・ジェンチェル
ジュゼッペ・ザンピエーリ
ローランド・パネライ
シチリア島の夕べの祈り」の次作(実際は「スティッフェーリオ」の改作「アロルド」が間にはいるが)「シモン・ボッカネグラ」は、個人的には1980年前後、未だNHK教育TVでオペラを放送していた頃、カップッチッリの映像を見た記憶がある。(1981年の例のミラノ・スカラ座来日公演だろう)
やたら渋いオペラだったような印象があるが、渋いのにやたらインパクトはあった。
あらためて調べると、低音男性中心、かつモノローグ中心ということで、これもヴェルディの意欲作の一つであろう。初演は失敗だったが、改定による24年後の再演は大成功だったらしい。
かつて聴いたカップッチッリ、また、ヴァルナイ参加盤、ヤノヴィッツ参加盤等、いろいろあるのだが、懐具合を考慮して、他と比しても遜色ない配役のこの廉価盤を入手。
14世紀のイタリア、政治的野心の無い元海賊のシモン(実在の人物)が、ジェノヴァ総督にかり出され、政治的内乱に巻き込まれる悲劇。
ゴッビが「お金を積まれて他の役をやるよりも、シモンをやりたい」と言ったぐらい、この役に思い入れがあったそうな。
そう言われて聴いてみると、他の役ではいかにも「歌役者」然としているゴッビが、シモンでは「一バリトン歌手」として、歌を楽しみながら(って言うと語弊があるが)朗々と、伸び伸びと歌っている気がする。
そしてお待ちかねのレイヤ・ジェンチェルである。基本的に太い声のソプラノは嫌いだが、ヴァルナイやこの人のように柔らか味があれば好きなのだな私は、きっと。
他のメンバーも申し分なく、派手なアリアこそ無いものの、心に染み入る音楽に満ちている。やはり、過去の印象は間違っていなかった。これはお気に入りになるな。っていうか、これは名盤なのかな。