秘刀(1995)
中津文彦
後三年の役を舞台とした、日本刀の発祥をめぐる物語。
蝦夷の蕨刀の存在から、湾刀である日本刀は蝦夷発祥であるという設定。
以前書いた「みちのく王朝謀殺事件」と同様
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2013/02/24/084625
高橋克彦さんの「炎立つ」を別解釈で読める感じ。やはりキャラ立てが違うのが興味深いが、例えば義家は、己の刀工を経清の元へ送り、経清を裏切るように追い込んで、結果的にその刀工に舞草刀(蝦夷刀)の秘密を探らせようと画策する、かなり陰険な謀略家として描かれる。
そして、その刀工がなぜ義家の元に戻らず、蝦夷きっての名工となったのか、の物語でもある。
最後にびっくりしたのが、その刀工をはじめとする登場する刀工が、実在の人物で「日本国中鍛冶銘文集」にその名が見え、主人公の刀鍛冶が、義家と共に陸奥へ来たが、貞任にとられた、と書いてあるらしい。ここから中津さんが話を膨らませたんだな。