ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」

シューリヒト指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1961)
ザルツブルク音楽祭のライブということで、発掘音源の一種であろう。
推進力抜群の演奏だが、ぼんやりしていると聴き逃してしまうニュアンスに満ちている。木管の意味深さは相変わらずで、時には弦を犠牲にしかねない事もあるほどだ。言い過ぎかもしれないが、こういう木管はシューリヒト以外では聴くことができないだろう。
先日日本のクラシック評論家の重鎮、吉田秀和氏の著書でたぶん単行本時代は読んでいた気がする「世界の指揮者」(1973:文庫化1977/2007)を購入したが、そこでシューリヒトの事を「玄人受けする」と表現しているが、さすがに言いえて妙だと思う。その曲をある程度知っている人にとってはたまらん音作りをする人なのだ。
もちろんそれだけなら名指揮者とは言われない。またまた「世界の指揮者」からの引用になるが
「シューリヒトをきいたあとは、「美しい音楽」というより「きれいな、濁りも汚れも無い音楽」をきいた。それも腹いっぱいきいたという満足感を味わうのである」
と書かれている。
最初に書いたことと、上記を同時にできる、それを天才と言わずして何と言おう。
また「エロイカ」の愛聴盤が増えた。
惜しむらくはモノであること。1961年なのだから、ステレオで残っていてほしかったし、あと一歩音を拾いきれていない気がする。
ちなみに例のシンコペ(こちら)はフリッチャイと同じく、掛け合い重視のパターン。