「剣客商売」の「春の嵐」小説と漫画

剣客商売」の「春の嵐」小説と漫画
剣客商売」の初の長編「春の嵐」であるが、最初は大島やすいちの漫画版で読んだ。
短編二つを同時進行させたような内容で、せいぜい中編止まりで、長編にするまでの内容かな?と、との時は思った。
しかし池波正太郎の原作を読んでみると、なかなかに面白い。この差は何だ、と思ったが、漫画版は、やたらと展開が速く、原作ではじっくり書かれている、いわゆる「小兵衛ファミリー」の人物間の心情の機微等が、かなりはしょられているせいだ、と気づいた。
これは、多分この長編を、コミックスの1巻分におさめなければならない、という編集上の都合であろう事はわかるのだが、例えば、小兵衛が下っ引の傘徳の、息子のための働きに対して涙を浮かべてお礼を言うと、それに感激した傘徳が号泣するシーンや、息子大治郎と三冬夫婦と小兵衛の若い妻おはるが、小兵衛を心配して夜に寝付けずに、結局みんなで起きだしてしまうシーン等は、それが無くてもストーリーには支障が無いけれども、省略するには実に惜しい。なんとか、いつか完全版を書かないかな。