アオサギの眼(1978)

アーシュラ・K・ル・グウィン
ハヤカワ版「世界の合言葉は森」に収録されているものの、現在入手困難ということで、サンリオ文庫「女の千年王国」に収録されている方を入手。
個人的なル・グウィンの時代分け(後述)で「中断期」にあたるノン・シリーズ中篇だが、長編と言ってもおかしくない長さを持つ。
舞台は地球からの流刑地惑星。通常の犯罪者の子孫で、旧態依然たる暴力的、貴族的封建主義への道を歩み始めた集団ヴィクトリア・シティと、当時の政治犯(あくまで、その時の政府に対する)の子孫で、あまりにも無垢な、理想主義的、愛と平和の非暴力、無抵抗主義の集団シャンティー・タウン、その人口は8,000人対4,000人。
ある意味「所有せざる人々」の縮小された別パターンとも言える。
そして、徐々に強まるヴィクトリアから圧力から逃れるため、新たな開拓地へ移ろうとするシャンティーを、ヴィクトリアは実力で阻止しようとする。
ル・グウィンの作品の中では、比較的素直なストーリー展開の、若い女性のフェミニズム的成長物語である。


ちなみに個人的なル・グウィンの時代分けは以下のとおり。
初期(1959〜1967)
デビューから「ハイニッシュ・ユニバース」初期三部作までの時代
開花期(1968〜1974)
ゲド戦記初期三部作と「闇の左手」「所有せざる人々」等の時代
中断期(1976〜1989)
ゲド戦記」「ハイニッシュ・ユニバース」シリーズ中断の時代
「オルシニア国物語」「オールウェイズ・カミングホーム」「空飛び猫」等
再開期(1990〜)
ゲド戦記と「ハイニッシュ・ユニバース」シリーズの再開以後の時代
ゲド戦記の最後の三作、「言の葉の樹」等々

この再開期は、まだすべて把握していないので、さらに分化する可能性がある。
特に最後に読もうととっておいてある「西のはての年代記」シリーズ(2006〜2008)が鍵であろう。