戦後SFマンガ史(1980:文庫化 2008)

米沢嘉博
本屋で見かけて買う。寡聞にしてこの人のことも、この本のことも知らなかった。手塚治虫デビューから1979年までのSF漫画を、漫画がおかれた状況や世相とも絡ませて解いてゆくまれに見る労作。
この本の前に「戦後少女マンガ史」(1980:文庫化 2007)があるので、それも読みたいものだ。
しかし、1979年で終わるというのも何か象徴的である。この本では1979年において初めて大友克洋の「Fire-ball」がとりあげられ、「童夢」は翌1980年である。そして、日本のSFはこれを機に「大友克洋以前、大友克洋以後」という時代分けがなされるようになるからだ。
私もリアルタイムに大友克洋に出会った世代で、(「宇宙パトロール・シゲマ」あたりか)まさに衝撃だった。ストーリーもさることながら、それまで漫画は主人公が日本人であっても無意識的に無国籍、もしくは欧米的な顔立ちにするという暗黙の了解があったのが、彼の書く登場人物は、我々がある種認めたくない、生々しいアジア人としての日本人だったからだ。(今ではあたりまえになったが)