ミス・マープル ポケットにライ麦を

やはり原作にほぼ忠実だが、原作ではラストは犯人の逮捕をほのめかして余韻を残して終わるが、こちらはテレビ的効果のためか、一応結末をつけている。
直接このドラマとは関係ないが、ネットでこの原作について、「中期の傑作という評判を聞いて読んだが、普通の推理小説で肩透かしを食らった」という意見があってちょっとびっくりした。どうもこの人は、「アクロイド〜」「オリエント〜」「そして誰もいなくなった」あたりを読んで衝撃を受け、そのあとにこれを読んだようだ。
はっきり言う。これらは推理小説としては1度しか使えない変則(反則)技であり、こんな作品ばかりをクリスティが書いたとしたら、あんなに長い間作品を発表することも無く、ぼろぼろになって引退していただろう、ということを。もちろんそういう作品を書いたクリスティの天才性は明らかではあるが。
私も「アクロイド〜」あたりに興奮した時代もあったが、年をとった今となっては、こういう変則技の作品よりも、他のクリスティ作品のほうがよっぽと好きである。「ポケットにライ麦を」は中期の傑作という名に恥じない作品であるということは断言できる。